2014/1/30(木)「つくり手の気持ちを考える」

2014年1月30日(木)

「ありがとうが生まれるサービス」

株式会社フェルミエ 本間るみ子氏

【プロフィール】
新潟県佐渡に生まれ、1977年チーズ輸入会社チェスコ入社をきっかけにチーズとの付き合いが始まり、1986年3月株式会社フェルミエを設立する。日本で初めての本格的輸入チーズ会社であるフェルミエの代表。フランスやイタリアをはじめ各国のチーズ生産地を丹念に歩いては美味しいチーズを発掘し、日本に紹介しているので欧州でも知名度が高い。国内外で講演活動やチーズスクールの講師を務めるほか著書も多い。チーズが日本人の生活にもっと取り入れられるように情熱的に仕事を続けるチーズの第一人者である。

「街に必要とされるお店」

日本の食糧自給率はどんどん下がっていて、現在は40%を切っています。戦後日本が急成長するとともに自給率は下がっていきました。一方、イギリスは最初自給率が低かったのですが、戦後ずっと上げていて現在は60%以上。他の国に関しては、自給率が100%に近いかそれ以上の国が多く、食糧は自国でまかなえるという非常に豊かな食生活があります。
他国では昔から、自給率が低くなることに警鐘を鳴らしていたのに、日本は最近になって危機感を持ち始めました。日本も生産者をきちんと守っていたら、自給率がここまで低くなることはなかったのではないかと思います。

私が海外に行って気がついたのは、他の国は農業を大切にしているということです。フランスでは毎年2月末に農業祭があるのですが、そこでは大きな展示場のようなブースがあちこちに建てられ、国中の家畜や農産物が何から何までやってきます。それが9日間も続くのですが、この間子供達も農業祭に参加します。子供の頃からきちんと食の教育を行い、子供から大人まで楽しむのです。

「金曜日の20時に出来ないことはやめる」

1986年にフェルミエを設立しました。当時はクリームチーズが大ヒットしたり、ピザチェーンがブームになったりと、チーズの需要が伸びていた頃でした。当時「グルマン」という本を見て「東京にはこんなに沢山のレストランがあるのか」と驚き、そこに掲載されていたレストランにDMを出したことから会社がスタートしました。そして沢山のシェフ達からチーズが欲しいと電話をいただき、持っていくと様々なリクエストをされました。こんなチーズが欲しい、あんなチーズが欲しい、と。

私は知識がなかったのですが、皆さんとても親切に色々教えてくれました。フェルミエとは「農家づくりのチーズ」という意味です。生産者の顔が見えるチーズを紹介していこうということで、どこも扱っていないようなフランスの農家で作っているチーズを仕入れ、何度も生産者を訪ねました。生産者や農家、特に個人で家畜を飼っている方々というのは、日々の生活を支えるのがやっとです。しかし慎ましいながらも、豊か。本当に美味しいものを作って、消費者にそれを食べてもらいたい。そこに喜びを持って仕事をしています。

このような生産者たちを私はずっと見てきたために、この人たちのチーズを絶対に買い叩かないと決め、生産者を大事にしながら商売を行っています。よく「おたくのチーズ高いんじゃない?もっと安くできるんじゃないの?」と言われますが、きちんとしたところからきちんとした価格で買っていますので、お客様には正しい情報を提供して理解をいただき、販売します。これがフェルミエのスタイルです。

フェルミエ設立以来、チーズに関する情報を伝える活動を継続しています。メンバーズクラブを設立し、試食会や食事会などのイベントも開催するほか、フェルミエ通信やメルマガ、フェイスブックなど、いろいろなツールで情報発信しています。また生産者との交流も大切にしています。お客様を連れて生産者を訪ねる「生産者を巡る旅」を95年から行っていますが、今年で50回を超えます。私のこれからの仕事は、今行っている活動を次の世代にも継承することだと思っています。

「街に必要とされるお店」

1919年に原産地呼称の法律(AOC法)が定められ、1952年にはストレーザ協定が結ばれました。これは、その国で製造されたチーズに対してのみ特定の名称を使用できる、という原産地を守る協定で、その後ヨーロッパ中で原産地をきちんと守りながらお互いを尊重しようという認識が生まれました。イタリアでは、DOC(DOP)やスローフード運動が生まれ、各国でも活動するようになりました。
今、日本でも他国を見習おうという声はありますが、国レベルでは全く進んでいない状況です。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、これからは料理だけではなく、それに使われる伝統的な食材をしっかり守っていかなくてはならないと思います。

「街に必要とされるお店」

スローフードの理念は3つあります。まず「守る」・・・消えてゆく恐れのある伝統的な食材や料理を守るということ。次に「教える」・・・子供たちを含めて消費者に味の教育を進めるということ。そしてもう一つは「支える」・・・生産者たちは支えられなければ生き伸びていけませんから、それを支えて守る。これら3つの理念から、スローフードは成り立っています。
年に1回、イタリアのブラという小さな町でスローフードの祭典が開催されます。その間学校は休みになるので、先生は子供達を連れていきます。このような形で子供の頃から食の教育を行っていきます。そこには沢山のチーズやバターが並びますが、私も行く度に素敵な出会いがあります。