2014/3/27(木)「つくり手の気持ちを考える」

2014年3月27日(木)

「ありがとうが生まれるサービス」

尾畑酒造株式会社 尾畑留美子氏

【プロフィール】
佐渡の旧真野町の尾畑酒造の二女として生まれる。佐渡高校、慶応大学法学部卒業。
大学卒業後は、東京に残り日本ヘラルド映画(現・角川映画)の宣伝部に所属。ハリウッド映画「氷の微笑」「レオン」などの宣伝プロデュースを担当。72日間、酒を巡る世界半周の旅を決行して、蔵に戻る。
現在、尾畑酒造・専務取締役。二女の母。真野鶴は米・水・人、そして佐渡の四つの宝の和を持って醸す「四宝和醸」をモットーとする酒造り。英国の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ日本酒部門」ゴールドメダル受賞に輝き国際的にも評価を頂く「旅する地酒」に思いを乗せて、佐渡から日本酒と故郷の魅力を世界に発信すべく活動している。日本酒造組合中央会需要開発委員。きき酒マイスター。すしアドバイザー。

「街に必要とされるお店」

「日本酒業界は低迷している」と、メディアでは嫌になるほど言われています。実際、1973年をピークに消費量は右肩下がりで、現在はピーク時のほぼ1/3まで減っています。しかし、その日本酒業界に近年追い風が吹いています。まず、海外への輸出量が増加していること。日本酒の生産量と輸出金額の推移を見てみると、生産量はずっと右肩下がりなのに対して、輸出金額はほぼ毎年増加しています。しかし、これは全国の生産額のうち2.8%にしか満たないというのが現実で、まだまだこれからです。

フランスを例にとると、フランスを支える黒字輸出産業のうち1番は航空機ですが、2番目は酒類。日本酒の可能性はまだまだこれからだといえます。日本酒が海外で人気がある割には輸出額が少ないですが、これは実は海外で飲まれている日本酒のうち半分以上は海外生産のものが流通しているからです。これから、日本産のお酒をどんどんPRしていかなければならないと思います。
また2012年からは、クールジャパンの一環で「國酒プロジェクト」という官民一体のプロジェクトがスタートしました。日本酒をもっと海外に輸出振興していこうというものです。

「酒蔵ツーリズム」という、酒蔵を中心に生産地の田園、食文化、郷土文化、自然環境を一体的に体験する外国人向けの観光促進プログラムもあり、先日、そのモデルケースが新潟・佐渡でも行われたのですが、大変好評をいただきました。その他、和食が無形文化財に登録されたことや、2020年の東京オリンピック開催も追い風です。今後訪日外国人が増えますので、日本酒業界もそこに向けて頑張ろうという動きがあります。

「金曜日の20時に出来ないことはやめる」

「おもてなし」とは、相手に対する扱いや待遇のことです。サービスとの違いとしては、ゲストが期待以上のホストの気持ちを感じとったとき、「もてなされた」と考えるのではないかと思います。 昨年、訪日外国人の数は過去最高数を達成しました。訪日外国人に対して「日本に期待するものは?」「日本に満足したものは?」と聞いてみると、両質問ともに「日本の食事」という回答が約6割も占めました。
訪日外国人の費目別旅行消費額を見てみても、宿泊費、買い物代に次いで飲食費は第3位で、観光への興味のうち食の占める割合が高いことがわかります。訪日外国人の増加とともに、日本において食は、これからどんどん伸びていくマーケットになります。 海外ローカルの方々に日本酒人気が広がっているという現状を考えると、訪日外国人にとって本場で味わう日本酒への期待は高いと思いますが、実際は「英語の表記がない」「飲み方や注文の仕方が分からない」など不満の声をよく聞きます。

そこで私の経験から、外国人に喜んでもらえる日本酒のおもてなしのポイントを3つお伝えします。まず「見える化」。日本酒の種類や産地、素材を言葉で説明するのではなく、図やイラスト、実物で見えるようにしてあげると、理解がしやすくなります。また一つのことに対する説明の時間も短縮できるので、限られた時間の中で多くのことを教えてあげられるようになり、ゲストにとっても濃密な時間を過ごすことができ満足度があがります。

次に「体験は記憶」。具体的には、利き酒セットを用意したりすることによって、そのお店での体験は色濃く残ると思います。最後に「遊び心」。和の演出をしたり、日本の乾杯を教えてあげたり、どんな小さなことでも結構です。一番大切なのは、ゲストに「楽しんでもらいたい」と思う気持ちだと思うので、これを取り入れた工夫をしてほしいと思います。 日本酒でおもてなし。それが国産振興と国際親交につながってくれることを願っています。

「街に必要とされるお店」

私は映画業界勤務時代にアメリカではまだまだ地酒が流通していないのを見て、ずっと海外に日本酒を出したいと考えてきました。2003年に手探りで輸出を開始したのですが、その大半は失敗しました。なかなかうまくいかないと思っていた矢先、2007年にある転機が訪れました。
International Wine Challengeという世界最大のワイン鑑評会の日本酒部門で「真野鶴 万穂」というお酒が金賞を受賞したのです。
金賞を獲った11蔵がロンドンのアワードディナーに集結したのですが、ここである気づきがありました。それまで、香りと透明感がある日本酒がいいお酒だと思っていたのですが、ここで金賞を受賞したお酒は皆個性があったのです。そのため「日本酒にもっと個性を持たせるべきだ」と感じました。

また、右肩下がりの日本酒業界の中ではどうしてもシェアの奪い合いが多かったのですが、「シェアではなく、マーケットを創造するべき」、そして日本酒の個性はすなわち生産地の個性につながりますから、「日本酒は地域を元気にできる」と。 そこから、当社は「四宝和醸」という言葉を作り、日本酒の三大要素の米・水・人に佐渡を加えて4つの宝の和をもって醸す、ということをモットーに掲げました。 そしてマーケット創造のため、色々な取り組みをしています。大学や雑誌、百貨店グループとの様々なコラボ企画を通してオリジナルの商品を出したりしています。

また、今年の夏からは新しいプロジェクト『学校蔵プロジェクト』に挑戦します。廃校になった小学校の一部を小さな酒蔵に改装し、本格的な酒造りを学べる場を作るというものです。酒蔵、農家、学び人がクロスすることで新たな交流拠点となることを目指します。佐渡ならではの酒造りを発信していける場になればと思います。