2014/4/24(木) 「レストランビジネスの素晴らしさ」

2014年4月24日(木)

「ありがとうが生まれるサービス」

株式会社オータパブリケイションズ 代表取締役社長 太田 進氏

【プロフィール】
東京生まれ。大正時代に高知でレストラン経営をしていた祖父、昭和の初めに帝国ホテル等で仕事をしていた父を持ち、親子三代で深くホスピタリティの世界に関わる。
15 歳から米国、スイスなど、海外のホテル、レストランでアルバイトをしながら学校へ通い、19 歳の時に米国料理専門学校のThe Culinary Institute of America(通称CIA)に入学。卒業後、東京ヒルトン、銀座マキシムなど様々なホテル&レストランにて修行をした後に父親が創業したオータパブリケイションズに入社。
以来30 年間で38 カ国のホテル・レストランおよび関連企業の取材を通して人間関係を構築する。質の高い情報と豊富なネットワークで業界をサポートすることを信念としている。

専門誌「週刊ホテルレストラン」(創刊昭和41年)の発行、ホスピタリティ業界内での人材紹介や国内外のホテル、レストランへの情報提供をする他、セミナー、イベント、教育分野などの様々なプロジェクトを展開している。

「街に必要とされるお店」

日本、特に東京は、世界の中でも最もレストランの競争が激しいエリアの一つです。その中で勝ち残っていくためには、「個性」と「感性」この二つが特に重要です。これらなくしてお客様の気持ちや、周りの環境を読むことはできません。同じような店が沢山ある中で、「うちはこうだ」というしっかりとした筋を通して他と差別化し、自分の個性や感性を大事にしていかなければならないと思います。

では、その個性・感性とはどこから来るものなのでしょうか。それは自分の人生経験を通して磨き上がってくるものだと思いますが、そこで一番大事なのは実体験です。聞いた話ではなく、体験をする。失敗をすることも大事です。レストランの人は毎日忙しいので、自分の店や客のことを見るのに精一杯ですが、店も人も伸びていくためには、周りの環境がどうなっているかをよく観察し、世界のトレンドなども含めて色々なことを取り入れていかなければならないと思います。

「金曜日の20時に出来ないことはやめる」

私は世界中のレストラン経営者に会う機会が多いのですが、その中でとても印象的だったのは、ホテルニューオータニにあるトゥールダルジャンのオーナー、クロード・テライユ氏でした。私は彼から、財産とは何かを学びました。
「目に見えるものは無くなるもの。そんなものは財産じゃない。信頼関係のある友達や学んだ語学、技術、そういうものが財産だ」と教えてくれました。お金をたくさん持っているよりも、お金を稼ぐ術、ノウハウ、自分なりの方法を取得することが大切だということを学び、当時20代だった私はこれから財産を作るために頑張らなければいけないと思いました。
それから何十年経った今でも、自分にとっての財産は目に見えないものなのだと心から思います。皆さんにとっても、家族や一緒に働く仲間、お客様の存在、そういうものが財産なのではないでしょうか。

「金曜日の20時に出来ないことはやめる」

私はよく「勉強したければ海外に行け」と言います。
海外には色々な文化と発想があるので、それを知ると今後のサービスや何かを考えるときの引出しに繋がるし、海外の人達と情報交換すると新たな視点に気がつくからです。
また、チップが稼ぐことができます。自分がその日行ったサービスの分だけお客さんがくれるものなので、その日の自分のサービスの善し悪しがすぐに分かります。
サービスの完成度を高めていくためには、自分の行ったことが良かったのかどうか、お客さんがハッピーだったのかどうかを考えなければなりません。本来チップは、お金をくれる人達に擦り寄って行き戦略的に考えて行うビジネスです。

それは、レストランの中で自分が一番稼ぎたいと誰もが思っているし、どうやったらその人たちに感謝されてお金をもらえるかと真剣に考えているから成り立っています。だからこそ、ゲストをよく見る、観察をするということが大事になってきます。
お客さんは今日何をしに来ているのだろう、何を求めているのだろう、ということを見ながらやらなければ、マニュアル通りの対応を全員に同じようにしても、上手くいかないことが多々起きます。
「この人は今これを求めていないな」と相手の顔色を伺ったり、「これが足りていないのではないか」とテーブルに行って聞いたりしなければいけません。面倒くさいことをオーダーする客もいますが、ウェイターはお金のために当然やります。レストランは、最終的には客に喜んで帰ってもらわないと意味がないので、その最終目的のために皆が一眼となってやるわけです。

「金曜日の20時に出来ないことはやめる」

自分が毎日作っている料理やサービス、店の展開を考えることはとても重要で、それをやめたらそこで終了だ、とある料理人は言っています。この業界に入ってずっとやっていくのであれば、今やっていることがどれくらい受け入れられているのか、これでいいのか、さらにもっとできることはないか、と考えなければいけません。この激しい競争の中で勝っている人たちは、考えて、差別化して、他とは違う形をとっていこうという意志があるから、他店より評価されているのだと思います。何も考えないでやっているところは、進化しないし伸びない。結果が出ないと思います。

どうすれば一日でも早く上に登ることができるかを考えることは海外では当然のことで、高いレベルでの戦いをしています。上には上がいる。やはり世界は広くて、色々な引出しや考え方を持っている人たちがいます。そういう人達を見て刺激を受けるというのはすごくいいことです。皆さんも巷で流行っている店に行き、なぜそこが流行っているのかというのを考えてみてください。けなすことは消費者誰でもできますが、その店のいいところを見つけることができると、プロだと思います。

なぜその店が他と違うかというと、経営者の考え方や姿勢が違うからです。その考えや姿勢は店のスタッフ全員に映ります。スタッフに元気がなかったり下を向いていたりするのは、それはやはり経営者の姿勢や発想がそのまま表れているからです。「元気がある」「雰囲気がいい」「楽しそう」「笑顔がある」そういうホテルやレストランは、トップが確実にそういうことを目指しているし、どうしたらそのようにできるかを常に考えています。

「金曜日の20時に出来ないことはやめる」

料理人でもウェイターでも、人間力を磨くことはとても重要です。上に登っていくために、どのように自分の道を切り開いていくか、自分を磨いていくか。これは、刺激をたくさん受けて自分の方向性を定めたり、他といかに差別化するかということを毎日諦めずに考えたりすることだと思います。レストランは相手があってこそのビジネスです。お客様より人間力が高くなければ、お客様を喜ばすことはできないと思います。自分自身が成長しなければいけません。
私が世界中のトップクラスのレストラン経営者を長年取材してきて、そのようなプロフェッショナルとしての姿勢を学びました。一緒に働いている仲間に夢を持たせるためにも、上に立っている人間がプロとしての姿勢がなければならない。経営者にそういう考え方がないとレストラン自体も面白くなくなるので、マインドセットは技術以上に大切だと思います。