2014/11/18(火) 「Storytelling with Surprise ~企画の力について~」

2014年11月18日(火)

「Storytelling with Surprise ~企画の力について~」

株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ 代表取締役副社長 軽部 政治氏

【プロフィール】
イベント、貿易、IT業界などの企業への経営参画を経て、
2004年10月にマーケティング専業会社の代表取締役社長に就任。
主にブランデッドエンタテインメントやバイラルマーケティングなどの
新しい広告手法を主業務としてマーケティングやマネジメントに従事。
2006年9月、これまでの経験を活かし、脚本家小山薫堂と共に企画会社
株式会社オレンジ・アンド・パートナーズを設立。同社 代表取締役副社長に就任。
2009年4月、東北芸術工科大学 デザイン工学部 企画構想学科 教授に就任。
2012年3月、京都料亭「下鴨茶寮」代表取締役副社長に就任。
小山 薫堂氏率いるプランナー集団
www.orange-p.co.jp

「新しい価値をつくる」

オレンジ・アンド・パートナーズは、エンターテイメントのスクリプトライター・小山薫堂とマーケッターの僕が共同で代表をしており、「新しい価値をつくる会社」であると銘打っています。今日は普段我々がやっている仕事のアプローチ方法をお話ししたいと思います。何を大事にプランニングしているのか、3つのキーワードをピックアップして事例とともにご紹介したいと思います。

「1. ストーリーを創る」

我々のモノの考え方は特徴的なのではないかなと思っています。広告代理店はマーケッティングリサーチ、つまり数字のデータ収集をもとに一番成功確率の高い企画を作っていきますが、我々の会社は広告代理店とは順番が逆です。最初に消費者が感動する物語を作り、それを後からクライアントのオーダーに応じてマーケティングします。つまり、面白いアイディアとストーリーから始まって、最後にビジネスニーズに合わせてマーケティングを組み立てるというステップを踏むということです。そのため、まず一番大事にしているのは「ストーリーを創る」ということです。

「2. 共感を創る」

二つ目のキーワードは「共感を創る」です。これは今どの業界においても重要なポイントなのではないかと思います。なぜなら、消費者の共感を創れば自ずとその熱量で輪は広がっていくからです。
首都高速道路から受けた依頼を事例にご説明します。7年前、「首都高速道路の交通事故を減らせ」というミッションを受けました。当時首都高では年間1万2千件程の事故が起きており、そのほとんどの原因がちょっとした思いやりの不足でした。従来の交通安全キャンペーンに対しては皆ネガティブなイメージしか持っていませんでしたが、そこに新しい価値を付加して共感を創り出せないかと考えました。ただの交通安全キャンペーンを、消費者が「かっこいい」「面白そう」などという目線で見るようになったら、自ら進んで協力してくれるのではないかと。そこで立ち上げたのが、恰好良く、ポジティブに、コミュニケーションのチカラで事故を減らす「東京スマートドライバー」プロジェクトです。これをただのキャンペーンではなくひとつの「ブランド」と見立てて、クリエイターやメディア、メーカー等に協力を仰ぎました。そして次に、このブランドの本質を象徴し皆が共感してくれるメッセージを考え出しました。それは、従来の交通安全キャンペーンのように悪い運転を「取り締まる」のではなく、「良い運転を褒める」ということです。すると、多くのメディアから取材が殺到し、一般市民からも賛同者が続々現れ始めました。この運動は7年連続で行っていますが、首都高の事故数は依頼を受けたときから年間2千件減るようになり、首都圏で始まったこの市民活動が勝手に全国に広まりました。東京スマートドライバーの賛同メンバーは16万人、賛同企業は150社にも上ります。もしこれが首都高の一方的な押しつけだったらここまでの規模にはならなかったと思います。そうではなく、消費者に共感を創って同じ目線で一緒にこの運動を盛り上げていこうとし、共感のタネを作ったからこそ、この運動は自走していくブランドに成長したのだと思います。

「3. 機運を創る」

ストーリーを創り、共感を創ったら、最後一気に盛り上げていくためにモチベーション=機運を創る必要があります。このことについては、日光金谷ホテルの再生を例にご説明します。
日光金谷ホテルは民事再生で救われましたが、従業員のモチベーションは最低に下がっていました。当時本当に暗かったのです。そんなとき、当時の社長が助けを求めてきました。そこでまず初めに取り組んだのは、とにかく従業員のモチベーションを元に戻すことです。しかしモチベーションはお金を掛ければ上がるわけではありません。ではどうしたらいいか。考えたのは、アルバイトやパートを含めスタッフ全員の「名刺をつくること」です。まずはスタッフ全員にホテルの中で自分の一番好きな場所を挙げてもらい、ホテルへの愛情を再確認してもらいました。そしてその場所の写真をそれぞれ名刺の裏面に印刷し、持ってもらいました。お客様に名刺を渡すという直接のサービスをし、お客様に笑ってもらえることがどんなに素晴らしいことなのかということをスタッフ一人ひとりに実感してもらいたかったからです。結果、これをやりはじめたら従業員が本当に笑うようになりました。自ら進んでお客様に名刺を渡すようなスタッフも現れ、ホテルは活気を取り戻しました。